□乳酸



前置きですが、良い酒造りとは簡単に言うと、良い米と水を使い良い蒸米を造り、良い蒸米を使い良い麹を造り、良い蒸米(掛米)、良い麹、良い水、良い酵母と水を使って強い酒母を造る。 これが最もシンプルな考え方だと思います。
その中では目に見えない微生物の力を利用し、糖化、発酵を同じに長期間行う非常に高度な並行複発酵という日本酒独自の発酵法が行われています。
そんな中、麹や酵母に隠れがちですが活躍するのが乳酸菌です。

モロミの中では様々な微生物がひしめき合い、まさに戦国時代。
最終的にその中で酵母が乱世を収め増殖しなければアルコール発酵は行えません。
しかし都合よく酵母だけが増殖し発酵を行ってくれるものではないのです。
放って置いては簡単に酵母は他の菌に負けてしまいます。

そんな生存競争の中酵母の繁殖を助け、活躍するのが乳酸菌です。

乳酸菌は自身の酸で他の菌を倒して酵母に有利な環境をつくっていきます。
酵母は乳酸と仲が良いですから、殺されずに生き延び増殖します。

やがて乳酸菌により他の菌が死滅し乳酸の天下がおとずれます。

酵母は他の菌がいなくなったことで幅を利かせ、乳酸天下の中、どんどん糖を食べアルコールを出して増殖していきます。

天下を取ったと思われた乳酸は増えすぎた自身の酸と、増殖を続ける酵母の排出するアルコールが嫌いで、どんどん数を減らしていきます。

そして気づいたら乳酸菌の天下は終わり、酵母が天下統一をします。


酷い略図




こんな感じで最初は弱い酵母を助け、酵母が十分強く育ったら消えていく乳酸は、酵母繁殖の下地を作るため酒造りに欠かせません。消えた乳酸も香味や味のおおきな一因となるため、現在の酒造りは乳酸の培養方法によって造りの種類が分けられると言っても過言ではありません。

 □現在の主な3つのもと造り(ちゃんとした)
   □速醸もと→あらかじめ培養した酵母と乳酸を添加する。
   □生もと→山卸しという作業により、空気中の乳酸を取り込み培養。
   □山廃もと→温度管理により、天然の乳酸を培養。 

 どぶろく造りでは清潔な環境と広いスペースが取れないことから、速醸もとでの酒母造りが前提となっています。
ドラッグストアやネット通販で乳酸を入手してみましょう。

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