□水

日本酒造りで一番重要な要素は水だと言われています。仕込みはもちろん、洗米、浸漬、道具の洗浄にいたるまで使われます。

この水の重要性を知る上で有名な話が、江戸時代より名醸地として知られ、現在でも日本酒大手メーカー(品質より生産性を追い求めたため、現在は名醸地とはいえません)が多数存在する灘酒です。

まだ酒造りが科学的に解明されていない時代、良い蔵=腐造(酒にならず腐ってしまう事)を起こさない蔵でした。
腐造が起こる原因は簡単に言うと、酵母が十分に増殖せず雑菌に冒されて腐ってしまった事を言います。
10本に1本は腐造が起こるといわれた時代、安定した量を供給でき、他の生産地よりも高アルコールであった灘地方の酒は非常に重宝されました。

この腐造を起こさない原因は、宮水と呼ばれる灘に流れる仕込み水でした。
この水は中硬水で酵母の栄養となるミネラル分が多く含まれ、酒造りの害となる鉄分が非常に少ないため、宮水で仕込まれた酒は非常に発酵力が高いため、腐造の危険性が低く、辛口の酒質となり、酒となった後も高アルコールのため劣化することも少なく、割り水にも耐え、これを利用し、酒屋の利益も増え非常に重宝されました。

このことから解るように、仕込み水の重要な要素は硬度です。

硬度とは水の中のミネラル分の指標で、アメリカ硬度(現在はこっちが多い)、ドイツ硬度(日本酒専門書ではこっちが多い)がありますが、水分中のカルシウムとマグネシウム量で計算されます。

□アメリカ硬度(ppm)=2.5×カルシウム+4.1×マグネシウム
□ドイツ硬度(1dh)=17.8×アメリカ硬度(ppm)

ミネラル分が少ない→軟水。ミネラル分が多い→硬水となっています。
このミネラル分が酵母の栄養となり、硬度によって発酵の様子が変化するため酒質に多大な影響を与えます。

軟水になると発酵がゆっくり進み、綺麗な酒になる(米が解けにくい)傾向があります。
硬水になると発酵が盛んなため、味のある(米の溶けが良い)硬い酒になります。

昔は前述のように、硬度の高い水が酒造りに向くとされていましたが、現在では綺麗な酒や、吟醸酒が求められる傾向にあり軟水が適するとされています。

現在の基準では、昔の酒はかなりくどい酒でした。
造りの違いもありますが、硬度の高い水では味が出すぎてしまう傾向があるのです。
高精米ができないどぶろく造りでは特にその傾向が出てしまうため、軟水仕込みが理想的だと思います。ただ、酒粕からの酵母培養に関しては酵母の増殖を目的とするため、中硬水の使用がよいと思います。

私は仕込みに硬度20のサントリー天然水の大奥山、培養は適当に中硬水の物をを選んでいます。

□水
  □中硬水 ←□酒粕培養酵母

  □軟水   ←□どぶろく仕込み□三段仕込


□使用する工程

どぶろく造りではミネラルウォーターを使用します。水道水では塩素、鉄分の心配があります。
ミネラルウォーターは仕込み水以外にも道具の洗浄、洗米、浸漬で使うことになるのですが、全てにおいてミネラルウォーターを使うことは経済的に良くありませんし、もったいない気がしてしまいます。
そこで最低限ミネラルウォーターを使用する工程をまとめてみます。


□ミネラルウォーター使用のポイント
  洗浄        ←モロミ容器、瓶に使用。他は水道水でok。
  □【米】原料処理
  │  □洗米     ←最も水を吸水する最初の一回目の洗米に使用。あとは水道水で手早く。
  │  □浸漬     ←多く吸水するため、全て使用。
  │  □蒸米      ←米が蒸気を吸うため、全て使用。
 
  □酒粕培養酵母 
 ←全て使用。中硬水。
  □どぶろく仕込み   ←全て使用。軟水。
  □三段仕込み     ←全て使用。軟水。

 

□主な市販のミネラルウォーターの硬度
  □サントリー天然水
  │   大奥山    20ppm  
  │   南アルプス 30ppm
  │   阿蘇          60ppm
  □ハウス 六甲のおいしい水 32ppm
  □コカコーラ 森の水だより
  │    日本アルプス    33ppm 
  │    大山山麓          42ppm 
  │    富山の天然水    31ppm 
    □クリスタルカイザー 38ppm
  □ボルビック  50ppm
  □エビアン 293ppm

 
日本はほとんど軟水です。 

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